名盤再聴:マイルス・デイヴィス:「Cookin’」のB面
個人的には1959年をモダンジャズの紀元元年のように捉えています。どの盤でも必ず録音の時期が1959年よりも前か後かを確かめ、大きな区別をするようにしています。
1954年に録音され、おそらく間を置かずに発売されたマイルス・デイヴィス「Bags’ Groove」の日本語ライナーノーツにはすでに「モダンジャズ」の言葉が使われています。(以下引用、文字遣いはママ)
今日のモダン・ジャズ界を背おって立つトップ・プレイヤー、そしてモダン・ジャズを直接推進してきたこの7人が、2つのクインテット・セッションに顔を合わせるこのLPこそ、血の気の多いわがくにのモダン・ジャズ・ファン待望のものであった筈である。
(「Bags’ Groove」ライナーノーツ、野口久光)
この使われ方から推測すると、1954年よりも数年前から「モダンジャズ」は日本で普通に使われる言葉となり、そのファン層もすでに形成されていたということでしょうね。
とはいえ、1959年に爆発的に増えたニューヨークあたりでのジャズの録音。その爆発的なセッション数の多さにより、おそらくは数が質に転化する的な変化が起こって、ジャズがそれまでのジャズから別物のジャズに進化したということがあるのでは?と考えています。そして本当の「モダンジャズ」が確立したと…。
その証拠に1959年以前に(特に米国東海岸で)録音されたものとそれ以降に録音されたものを聞き比べてみると、表現手法、プレイの集中姿勢、テーマの現代性などにおいて明確な違いが聴き取れるはずです。まぁ素人の思い込みのようなものなわけですが、個人的にはそのように区別をして、聴くようにしています。この区別があると、自分の頭の中でそれぞれの演奏を歴史的に位置づけることが容易になり便利です。
この「Cookin’」の録音は1956年となっています。紀元前なわけですね。
1. Airegin
Aireginと言えば、どうしてもウェス・モンゴメリーのギターのAireginが耳に鳴ります(「The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery」収録)。80年以前にジャズ喫茶に通っていた方の多くはそうではないでしょうか?当時何度も聴かされました。
ウェスのAireginになじんだ耳からすると、「Cookin’」のAireginは「お、違う!」「新鮮!」という印象がありますね。ただテンポが少しトロい。ウェスのが速すぎるということなんでしょう。
「Cookin’」のAireginでは正直なところ、ジョン・コルトレーンのプレイの方がエッジが立っている感じがしますね。
Wikipediaその他の資料を読んで初めて知りましたが、Aireginはソニー・ロリンズの作品。初めて録音されたのがソニー・ロリンズも参加していたマイルス・デイヴィスの「Bag’s Groove」(1954年録音)。ということで「Bag’s Groove」のB面1曲目に入っている最初のAireginも確かめてみました(同アルバムは自分は未聴)。
ウェスのになじんだ耳からするとなんとなく「未完成のAiregin」という感じがします。テーマ途中に入る休止がやや長く、調子がくるってしまいます…。とはいえ、ソニー・ロリンズンのテナーはなかなか素敵です。
2. Tune Up
イージーリスニングのような響きがするテーマですね。ジャズの聴き所はソロプレイのテンションの高さ、集中度の高さだと思っています。そういう意味でマイルスのソロとコルトレーンのソロを比べると、こちらも断然コルトレーンがまさっている印象があります。しゃべりで言えば「強くしゃべっているな」という印象。また、語る内容もマイルスよりは多く、「オレの方がしゃべりたいことがいっぱいあるんだ」というプレイになっているように聴こえます。細部もよく詰まっています。
3. Just Squeeze Me
くだけた感じのマイルスのペットがいいです。力を抜いたナンバーです。最後はこういうゆるゆるだらだらな感じで終わるのもいいと思います。
マイルス・デイヴィス、まだまだ全部を聴きこんでいるわけではありませんが、「マイルス的なもの」ができあがりつつある状況のマイルスを確かめることのできる、よいアルバムだと思います。
検索用英文表記 Miles Davis, Wes Montgomery, Sonny Rollins, John Coltrane

