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自分は、現在の経済環境の大きな変化が必ずしも恐慌に結びつくとは思っていません。というのも、現代では、ネットワークで明示的暗示的に結びついた 様々な主体(企業と個人)が状況に接してすばやく自らの行動にフィードバックをかけ、状況に適応していくメカニズムが働いているからです。先般の世界各国 の経済政策の同時多発的な連携などにも、そのメカニズムの一端を窺うことができます。大手製造業の過去に例を見ないスピードで行われている生産調整なども その表れだと思います。
1920年代末に始まった大恐慌では、多くの企業や個人がその時々の状況を正確に把握するための情報を得る術がなく、あったとしてもパニック的に現 象を喧伝する新聞やラジオだけだったでしょうから、状況に対して、あり得べきフィードバックをかけることができなかったと思われます。言い換えれば、 フィードバックに多様性が生じ得ない状況だったはずです。そこには群衆心理に突き動かされたネガティブフィードバックの連鎖しかなかったと思われます。
先般のニューヨーク市場の株式の連続的な暴落も、瞬間的にネガティブフィードバックが最高度に高まった状態であったと言えますが、この、大多数の投 資主体が同一パターンのネガティブなフィードバックをかけあって増幅していく状況は、そうそう起こるものではなく(いわゆるブラックスワン的状況なので しょうね)、普通は、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックが混交して、ある種の均衡状態がもたらされるというところだと思います。
ポジティブなフィードバックという意味では、現在の環境にイノベーションを実施する余地を見い出し、それを粛々と実践していくということには大きな意味があると思います。特に、これまでは着手が難しかった非常に大きなイノベーションの準備を行う好機だと思っています。
イノベーションは、ロジャーズによれば「イノベーションを広めるためのコミュニケーション」を含んでいる必要があり、そうしたコミュニケーションが 欠落したイノベーションは成立しません。よく、イノベーションは、新しい技術だとか考案物だとか発明といったものとして考えられています。しかし、ロ ジャーズによれば、その技術自体、考案物自体、発明対象自体と同等か、それ以上に重要なのが、浸透のためのコミュニケーションであるということのようで す。件の大著は、そのコミュニケーションのあり方について延々と記述しているものすごい書物です。
仮に、イノベーションの成立にそうしたコミュニケーションが欠かせないのだとすれば、市場にいる多くの顧客を取り巻く状況が大きく変化している現 在、過去には関心を引かなかった考案も、現在は大きな関心を引く可能性があり、そのイノベーションは普及していく可能性が出てきます。
現在は、企業の生産活動、雇用、消費者の所得の将来の可能性、現在の消費活動などにおいて、大きな調整がかかっている時期です。特に消費者の心理が 大きく変化していると思われます。(企業はこれに追従する必要がありますが、その追従が既存のやり方では間に合わないぐらいの状況にあるのではないかと察 します。)
企業は、こうした消費者の心理の大きな変化を踏まえて、過去には取り組むことができなかったような大がかりなイノベーションに着手することができるのではないでしょうか?
現在消費者側では家計の将来見通しが立てにくくなっているので、先日記した「消費生活トータルソリューションパッケージ」的な発想などはすごくよいと思います。これは企業1社では実現不可能な、個々の業界が持つ既存の商慣行の大きな改革を必要とする大きなイノベーションです。
その他にも「消費者向けビジネスのサービス化」という軸があります。これまで、単一の商品に価格を付けて販売してそれで終了としていた形態を抜本的 に改め、契約を結んだ消費者に対して連続的に商品を供給し続け、プロダクトライフサイクルの全体で面倒を見る、しかも多くの顧客接点はインターネットや ケータイを使ったやりとりでなされ、もって顧客ロイヤルティも増す、という形態です。
これも、消費者側の支出が結果的に削減できるなら、大きな支持を得る可能性があります。
ウィークリーマンションのツカサが行っているような若年層に対する職業訓練と雇用の組み合わせも、いくつもの新機軸が可能だと思います。
いずれにしても、以前であればあまり真剣に向き合ってもらえなかったイノベーションの提案が現在では現実味を帯び、多数の顧客に歓迎されるということも大いにある話であり、そういう意味で「大きなイノベーション」を推進していく好機だと思うのです。
大きなイノベーションとは、巨額の投資を必要とする意味ではなくて、既存の制度や業界慣行などの抜本的な変更を伴うイノベーションという意味です。 顧客側のマインドセットも、業界側のマインドセットも、長年の商慣行によって固定化してしまっている状況において、そのマインドセットに大きな変更を迫る 制度的なイノベーションということになります。
現在の経済の激変は言うなれば、世界規模で起こっている資金、人材、資源などのミスマッチの調整プロセスですが、発想を逆転させると、マッチングの好機は至るところにあり、そこではネットやケータイを大いに活用できると思うのですが。
現在の世界経済の大きな変化は循環的なものではなく、不可逆なものであるかも知れないと考え始めている人も少なくないと思います。金融に関してはそ ういう発言をしている人をちらほら見かけます。まだ読んでいる最中の"When Markets Collide"でも、これから起こる変化(執筆時期は2007年末)は過去の延長線上にあるものではないであろうことが詳述されています。
今泉としては、こうした変化を非常に単純な図式に落とし込んで、先読みをするための”レンズ”を作るのが好きです。状況の単純化は関連諸分野の専門 の方々からすれば厳に慎むべきことなのかも知れませんが、1企業人としては、そういう単純な図式が手元にないと、「あっちに行こうかここで留まろうか」と いう判断をする際に、非常に手間がかかって不便です。
McKinsey Quarterlyなど米国経営誌がすばやくそうしたレンズを出してくれるかと期待していますが、まだそこに至ってはいません。渦中の米国の人たちが将来 に有効な思考の枠組みを確立するには、まだかなりの時間がかかるものと思われます。(その関連では、日経ビジネスオンラインに出た御立尚資氏の「世界的デフレか、それとも価格“正常”化か」がすごくよかったです。)
前提を簡単に共有しておくと…。
・過去10~15年程度の世界経済の成長はグローバリゼーションに伴うもの。
・新興国は当初、人的資源の供給源としてグローバリゼーションに貢献したが、国富が蓄積されるに及んで先進諸国への資金の貸し手として機能するようになった。
・グローバリゼーションの背景としては、米国の旺盛な個人消費(米国GDPの7割)が挙げられる。
・ブッシュ政権下、米国の持ち家政策が浸透し、サブプライムローンの信用供与が旺盛になされて低所得者層も積極的に新築の住宅を購入した。
・関連諸産業がすべて恩恵を受け、米国経済の活況がもたらされた。日本の輸出産業も、中国などの生産拠点も等しくその恩恵を受けた。
・ローン主体で回っている米国の個人消費を最終的にファイナンスしていたのはグローバリゼーションで国富を蓄積した国々。
・米国に近い図式がイギリスやスペインなどでも発生した。
・世界経済の活況の中で金融技術が大きく進歩し、レバレッジとリスクヘッジを組み合わせた多様な法人向け金融商品が生まれた。これを世界各国の金融機関や機関投資家が購入した。
・これら金融商品が過去数年程度は大きなリターンをもたらし、それがより多くの機関投資家等を引きつけて投資規模が拡大していった。
・これらの全体的な図式はある時期から維持不可能なものになった。
以上はざっとめぼしいものを挙げただけで、実際には非常に多くの要素が組んずほぐれつしているので、どこをどう解きほぐしてみても、納得してスッキリという感じにはならないのではないかと思います。正確なメカニズムの解明は専門の方々にお任せするしかありません。
過去をじーっと見ても未来が見えてこないので、未来を見るために簡単な図式を考案してみると、次のようなものがよいのではないでしょうか。
・世界全体の企業活動を支えていた原理「付加価値の向上」が付加価値の供給過剰を起こし、様々な企業が付加価値を恒常的に高めていくシステムが維持不能になったと考える。
・別な視点で言えば、現在の企業の付加価値を購入する顧客が市場から非常に速いスピードで消えつつある、と考える。
・今後の企業活動の焦点はより「本源価値」に焦点を当てたものとなる。
・個々の企業の具体的な活動において、顧客を獲得し維持していくためには、これまでとはまったく異なる方向性が求められる。価値発想の原理の転換が必要になってくる。
・過去の延長で付加価値を追求する企業は顧客を失い、自ら考え抜いた本源価値を追求する企業が顧客を得ていく。
現在の世界的な大手企業の生産見直しなどの動きは、おおむねこの思考枠でよく説明できると思います。ただし、その本源価値がどのようなものであるかは、これからみんなが考えていかなければならない。
ここで言っている付加価値をわかりやすく言うと、おおむねモダンな生活が成立した1970年代あるいは1980年代の生活水準を支えていた企業活動を基準とし、その後に付加された様々なモノ、サービス、機能などを指します。
最 近たまに高度成長期のモノクロの日本映画を見たりするのですが、あの頃でもまったく人は普通に生活できていたわけで、しみじみとした思いにかられます。同 様に1970年代1980年代でも、日本においても米国においても、かなりモダンな消費生活は可能だったわけで、そこまで時間軸を戻して考えると、生活に おいて何が不可欠で、なくてもよいものは何かが見えてくると思います。(もっとも70年代80年代と根本的に異なっているのはネットとケータイの存在で、 これは不可欠な部類に入るんでしょうね。)
タイトルで言ったレンズとは、これからは企業が付加価値を追求する時代ではなく、より本源価値に絞り込む時代になるだろう、という見立てです。この前提で自分たちの動きを設計したり企業一般の動きを測ると、見誤らないのではないかという気がします。
ドラッカーが存命中なら現在の状況についてどう書くだろう?などということを時々考えます。現在起こっている変化を一過性のものとして捉えるのか?それとも何か根本的なものが変化していると捉えるのか?
「フラット化する世界」で非常にリアリティのある世界の”いま”を報告してくれたトーマス・フリードマンなら、現在の状況をどう書くのでしょうか? 例えば1ヶ月間世界各国を見て回ったとして、何が彼の関心を捉え、何を主テーマに据えるのでしょうかね?まさかタイトルが「デコボコになりつつある世界」 にはならないと思いますが(爆。
事は「金融危機とそれに伴う実体経済の悪化」という常套句で括れるものではないのではないか、という気がし始めていますが、みなさんはいかがですか?
この状況を正しく認識するための枠組みが必要だと考えています。日々様々なことが起こるなかで、大きなトレンドがどこに向かっているのかを見失わず、それでありながら日々の仕事や意志決定などに生かせる枠組みが欲しいところ。
池田信夫氏が推薦していた書籍「When Markets Colide」(Mohamed El-Erian著)を注文して取り寄せてみました。書籍の紹介文には、現在大きな変化が起こっているなかで、どのような投資戦略が有効なのかを論じているという意味のことが書いてありました。投資戦略=未来の先読みですね。
Mohamed El-Erianは、世界最大の債権投資信託Total Return Fundを運用する投資会社PIMCOのCEO。債権界のチャンピオンだという形容をCNNか何かで見たことがあります。
本を取り寄せてすぐに落胆してしまいました。というのも同書が書かれたのは主に2007年。一部が2008年1月に追記されて刊行されています。つ まり、その後に起こった大きな動きを踏まえていません。短絡的ながら古くて使い物にならないのではないかと思ってしまいました。
しばらく放置しておいて先日頭からゆっくり読み直して見たところ、以下が判明しました。
・2008年9月のリーマン破綻以降、立て続けに起こった金融界の激震をほぼ正確に見通している
・金融界が抱えている問題をほぼ網羅している
・新興国から先進国へという大きなお金の流れを歴史的な視点で見ている(歴史が大きく変化しようとしていることを認識している)
ということで先入観を改めて、わくわくしながらちまちま読み進めているところです。
各所で「歴史観がしっかりあるなぁ」という印象を持ちます。2007年の動きを振り返った部分なども、あたかも歴史書を読んでいるかのような読書経験が味わえます。沈着な方なのでしょう。
同書によると、投資銀行が積極的に販売していたCDOなどの機関投資家向け商品は”過剰生産かつ過剰消費”という状況にあったそうで、その市場が維 持不可能であることは明白だったようです。格付会社もそうした商品に高格付を与えていたため、世界各国の銀行等が喜んで買っていた様が窺われます。
ただそれは現象の一側面であり、もっと本質的には、グローバライゼーションによって富を蓄積した新興国が自国ではそのお金を消費しきれないばかりか、投資先もほとんどないということがあるようです。なので、そのお金が米国などに回って過剰消費を支える構造になる。
ここまでは多くの人の共通理解になっていると思います。この先で何が書かれているかですね。楽しみです。
なるべく起きがけに書くようにすると、ブログ書きのリズムがよみがえってきますね。
過去3ヶ月の世界経済の動きから、いくつかの新しい事実が浮かび上がってきていると思います。ざっと挙げると以下のようになります。
・従来、連動していないと思われていた市場や経済活動も、実はすべてがつながっており、分散投資的な発想が効かなくなっている。
・2000 年以降の中期の世界経済の成長(新興国の成長を含む)は、米国の住宅バブル(=米国の底上げされた個人消費)と欧州の住宅バブル(=同じく旺盛な個人消 費)が牽引していた可能性が高く、その2つがなくなってしまった現在、世界経済の成長可能性が不透明になっている。
・原油やコモディティを含む市場のすべてにレバレッジを効かせた資金が入り込んでいて、同時多発的な高騰がもたらされていたが、デレバレッジで資金が流入しなくなったことにより同時多発的な暴落となった。
ひょっとすると、過去数年の世界経済全体が上述のバブルに乗っていた可能性があり、従来の経済環境の認識を大幅に修正しないと、これからの動きが読めないという状況になっています。
そういう中で、毎日経済新聞を開くと、かなり刺激的なニュースがいくつも並んでおり、こちらが無防備にそれに接するとかなりげんなりするということになってしまいます。
そういう時に、昨日書いたようなシナリオプランニング的なことを行っておくと、今後出現しそうな事象に備えができるので、非常に有効です。シナリオ プランニングの最大の効用は、予め危機シナリオを検討しておくことによって、仮にそうした事態が生じた際にも、沈着に必要な動きができるということです。
個々の職業人においても、例えば上述のような世界経済の新しい事実を踏まえて、今後起こり得る世界経済や日本経済の様々な動きをシナリオとして持っておくならば、毎朝経済新聞を開いて驚くようなことがなくなります。
経済報道は事象が発生してから、その衝撃の大きさにまず心理的に反応し、それでもって記事を書くので、どうしてもネタが誇張されがちです。大見出しになります。それを読む方は驚かされるわけです。
自分の中にシナリオがあると、経済新聞が非常に大きな見出しで報道するような経済事象も、すでに心理的な準備があるということになるので、「あぁそうか。これが来たか」と冷静に受け止められます。
そういう新しいシナリオを持っておくと、事業上の新しい好機も見えやすくなると思います。
シナリオプランニングによって経営戦略を立てていた方々は、現在、どのような対応をされているのかが非常に気になります。
オーソドックスなシナリオプランニングを利用していた場合も、その派生系の例えばDeloitteのStrategic Flexibilityの ようなマルチシナリオプランニング系のツールを使っていた場合にしても、リーマン破綻後のような経済環境の激変は組み込めていなかったはずで、用意してい たシナリオがすべて無効だとわかった時に関係の方々が何を行ったのか…追々明らかになるのでしょうが、いまこの時点で非常に知りたいと思います。
一般的にシナリオプランニングでは、複数のシナリオドライバー(シナリオを形作る主因)を立てて、それぞれに数値の幅を割り当てて、シナリオを作り ます。例えば、米国景気動向というシナリオドライバーを立てたとすると、それを表象する数値としてダウ平均を選び、ダウ平均が9,000ドル ~18,000ドルの幅で推移すると仮定して、その幅のある1点を決め、その状況において何が起こるかを考えます。
多くの場合、エネルギー動向も 企業活動に多くの影響を与えるので、それをシナリオドライバーの1つとして立てて原油価格の幅を設定し、その幅の中でありうる1つの値をとって、シナリオ を考えます。例えば1バレル70ドル~120ドルの幅で設定し、75ドル近辺なら何が起こるか、110ドル近辺なら何が起こるかを考えるわけです。
それら複数のシナリオドライバーが設定した幅で動くことを前提に、それらのシナリオドライバーの”変化の束”としてシナリオが作られます。楽観的なシナリオから危機的なシナリオまで複数作るのが基本です。
危機的状況を表すシナリオでは、個々のシナリオドライバーのどれか1つあるいは2つが異常な値になることを想定します。例えば、上述の例で言えば、ダウ平均が下限の9,000ドルになった時に外部環境はどうなり、世界経済はどう動くかということを考えます。
シナリオプランニングを採用していた多くの企業においては、現在の経済環境の激変によって、従来なら有効であったであろうシナリオドライバーの数値 設定の幅がほとんど意味をなさない異常な値が複数出現しているはずで、そこにおいて、どういう対応をされているのか、すごく気になるのです。
事は非常に深刻であり、シナリオプランニングという経営戦略立案ツールをこのまま使い続けるのかどうかという、ぎりぎりのところで議論されているか も知れません。しかし、シナリオは、依然として、”自分たちが認識しなければならない複数の要素を全体的かつ俯瞰的に把握する”のに非常に優れたツール で、経営者の方々のみならず一般従業員の方々に至るまで、環境を正確にかつ短時間で理解することができます。これを使わずして、今後を乗り切っていくこと ができるとは思いません。
過去3ヶ月のうちに、今後の世界経済の見通しを立てるための主な要素の動きはほぼ出揃ったと見てよく、シナリオ作成に必要な所与を得ることは比較的 簡単な状況になってきたと思います。米英金融、国内金融、米国株式、日本株式、原油、日本不動産、日本自動車、日本電機、米国個人消費、日本個人消費、新 興国の成長などなど、外部環境を決める主因の趨勢は見えました。いずれのシナリオドライバーを選ぶにしても、現在なら現実味のある数値のレンジを大胆に設 定することができると思います。
過去のシナリオをいったん白紙に戻した上で、新しいシナリオによる新しい企業活動が求められていると思います。
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昨日、シリアルイノベーションに掲げたものを転載しています。
日経は好きでずっと読んでいますが(休みの日に2時間ぐらい風呂に出たり入ったりして、たまった日経を読むのが一種の趣味のようになっています)、世界経済の方向感をつかむには、多少役不足です。
日経はやはり”内国”の新聞なので、どうしても視野が「日本の企業人が考える世界経済」になりがちです。例えば、日本企業の進出があまり活発ではな い地域に関する報道はどうしても手薄になります。また、世界には、日本の企業人が考えるのとはまったく異なる発想で、こちらから見れば理解しがたい経済活 動をする人たちがいますが、そうした人の動きは日経のアンテナには引っかかってきません。なので、欧米系の情報源などで補完することが不可欠です。
そんなこんなで、折々、あちこち見て歩いているわけですが、最近の経済状況を手間ひまかけずに把握するには、BusinessWeekが一番よかろうという結論に達しました。
理由は以下のようになります。
A. WSJのように一部有料というわけではない。
B. 最新の記事はAP経由でカバーされている(APの経済記事をあなどってはいけません)。
C. こってりした分析記事が豊富にある(必要なもののみ検索して読めばよい)。
D. 特集記事のテーマ設定が同時代的であり(当たり前と言えば当たり前ですが)、かつ、後追いの視点ではなく同誌独自の動物的嗅覚が感じられる。
特にDが重要です。われわれ素人にとっては、世界経済の動向をくまなくウォッチして完璧に把握することは無理ですが、それでもある程度は方向感は欲しい。
経済の場合、方向感はなるべくなら早くに獲得した方がよいわけで、日本の出版社系週刊誌が扇情的に曲解した見出しを書き始める1~2ヶ月前ぐらいには、大筋の動向はハラに納めておきたい。
そういう時にBusinessWeekがまれに見せる、独自の嗅覚による独自の特集記事が役に立ちます。
とは言え、世界経済の動向把握は、山歩きで行う観天望気のようなもので、1つのメディアだけに頼らず、身近な事象を含む様々なものにアンテナを張って、ある種の全体感覚をもっておかなければならないわけですが。
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本投稿をシリアルイノベーションの方にも投稿します。当面、あちらとこちらで同じものを投稿する形式にすると思います。
昨日読んだWall Street Jounalの記事が興味深かったのでメモしておきます。
Bailout's Next Phase: Consumers
Paulson氏が色々な難題に立ち向かっている状況が述べられています。金融機関の救済については方針が明確になり、自動車業界の救済については現在はパスという状況。それに続いて、消費者をどう救済するかというところに焦点が移っているようです。
周知のように、米国では住宅価格の値上がりを前提として、個人の消費を活発にする信用供与が行われてきました。ホームエクイティローンでクレジットカードの利用枠を増額したり、自動車などの高額商品の購入の頭金がホームエクイティローンでまかなわれたりということが行われてきたようです。
住宅価格の値上がりという大前提が崩れてしまった今、こうした消費が止まってしまっています。
その背景には、このような消費者信用を成立させていた資金市場で金融機関やノンバンクが資金を取れなくなっているという現状があるようです。消費者信用関連資金市場において、1年前には500億ドルの取引があったものが現在では5億ドルに激減しているそうです。
この現状を打破するため、Paulson氏らは、消費者信用金融商品の証券化商品の市場のような枠組みをつくり、そこで、証券化商品に対して一種の保証を行って、それらがよく買われるようにするということを考えているようです。誰かがそうした証券化商品を買えば、金融機関やノンバンクに資金が回り、それによって消費者への信用供与枠が増え、個人消費が復調する可能性があります。
ここにきて気づくのが、米国では、個人消費の活性化のためには「お金を借りやすくする方策」が第一に来るのだという現実です。それほどまでに「借りて行う消費」が浸透しているのであろうということです。日本の一般的な感覚からすれば非常に奇異が感じがします。
現状の金融危機が示している素朴な事実は、お金を借りて行うレバレッジにはサステナビリティがないということです。そして同じことは個人世帯にも言えます。そのことにフタをしていて、現在でもなおかつlendingを活発化させようとしている金融行政の首脳たちがいるという状況には、やはり違和感を覚えざるを得ません。
現在の経済状況では、米系のニュースサイトをのぞくことは不可欠です。
先般の金融危機以来、Wall Street Journalのサイトも再び足繁く行くようになりましたが、過去数年の間で、ぐーんと充実したのが、米Yahoo! Financeのトップページの記事リストです。むかしは、失礼ですが、あまりまともな記事はなかったように思います。現在でも、APなどの提携配信先からのニュースですが、おおよそ、同国で報道されている経済的事象の動きは、Yahoo! Financeをちらっと見るだけでわかる程度にはなっています。
Wall Street Journalは、本来は有料サイトなので、料金を払っているうちはよいのですが、購読をいったん切ってしまうと、敷居が高くなります。無料で読める記事もむかしから比べればかなり増えましたが。
英国のFinancial Timesのサイトもいくつか巡る候補には入りますが、日本からアクセスすると、デフォルトではアジア版が表示されます。それを英国版にしてやらないと、本来の記事が出ません。われわれ日本人は、世界経済に関する情報を得る際には、米国視点の文脈に慣れているので、そういう目で同サイトの記事をみると、多少英国ローカルな感じがします。
ということで、米Yahoo! Financeの記事が無味無臭でよいということに…。
池田信夫氏のブログは、当然ながら、よく訪問してチェックしています。IT、金融、経済に関する米国のもっとも新しい潮流を、彼の書籍紹介を通じて、おぼろげながらに知ることができます。昨日紹介されていた"When Markets Collide"は、次世代の投資を知るには不可欠といった評が躍っているので、とりあえずアマゾンで注文してみました。全部読まないとしても、雰囲気ぐらいは押さえておきたいです。
池田氏が同書が主張するポイントとして3つ挙げているうち、特に、以下が目を引きます。
>投資の主体が先進国から新興国に移り、世界的に大規模な資金過剰が生じている。
この「資金過剰」については、池田氏がリンクしている自身のブログの投稿や、1.5ヶ月前ぐらいの日経ヴェリタスに掲載されていたアラン・グリーンスパン回顧録増補版の特集記事のなかのグリーンスパンの発言において(要は増補版を読めばその中に書いてあるということですが)、メカニズムが記されています。新興諸国では、昨今の経済発展により富の蓄積が起こっているが、国内の投資対象が限られているため、その富を吸収しきれず、それが米国等を経由して世界の金融市場に回ったとするものです。本来的に、資金は過剰であり、現在の金融危機が一段落しても、全く別の形で何らかのバブルが早晩起こることは避けられないと、両氏とも述べていますね。
先日読んでおもしろかったのが、朝日新聞のサイトに出ていたケンミレ株式情報・森田謙一氏の文章。
『金融危機の後、日本はどうなる? シミュレーション』【森田レポート】
98年頃、盛んに金融情報系のウェブを巡り歩いていた時期に森田氏のユニークな論の立て方に興味を覚えたことがあります。彼は、コンドラチェフの波を使って長期の景気の動きを論じており、彼の見立てによると、2000年代に入ってからは「日本の時代がくる」という結論になるとのことでした。
上の文章では、
-Quote-
私は1997年から3回、長期展望というレポートを書いています。書く度に『1997年の見方と今回の見方は代わっていません』と言ってきましたが、12年経過した今、これから書くレポートも、根本的な考え方、見方では、1997年と変わっていないレポートになるのではないかと思っています。
-Unquote-
と書かれていますが、この長期展望には、私が98年頃に読んだレポートも含まれていると思います。その頃と、論がまったく変わっていないというのが特筆すべきことです。
このように10年経っても論を変えずに論じ続けるという姿勢は、シリアルイノベーションの方で言及したさわかみファンドの澤上氏にも通じるところがあります。
末尾にある以下のパラグラフで”勉強の重要性”を強調している点に好感が持てます。
-Quote-
つまり資格好きで本当に必要な勉強が嫌いな日本人が、本格的に勉強する時代が来ると思います。先んずれば人を制すではありませんが、そしてなんでも『初期 が一番儲かる』ということもあり、今から『日本の時代に向けた勉強を開始する』のも良いと思いますし、このレポートがその切っ掛けになってくれれば最高だ と思います。
-Unquote-
